カット・ユア・ヘア

カット・ユア・ヘア

最後に髪を切ってから三ヶ月くらい経つのだが、いよいよ明確に好き放題伸び続けた弊害が出てしまっており良くない。
シャンプーの消費は早いし、髪も乾きづらい。寝起きで鏡を見れば、良からぬ使い方をしてひみつ道具が爆発した後ののび太のようになっている。あいつは「もうこりごりだあ」とアイリスアウトしてしまえばその日の仕事は終わりだから楽なもんだが、俺はそこから一日が始まるのだ。
流石にそろそろ切った方がいいですよねと真栗さんに聞く。その実俺はフォロー待ちだったのだが、彼女は薄笑いを浮かべながら、なんか最近、あだち充の自画像みたいになってるよと言った。
何だそれと検索をかけてみたら、確かにメガネの形も髪のボリュームも俺そのもので驚いた。しかし俺は髪型を真似たところで所詮みゆきもタッチもクロスゲームも何も生み出せない。

髪って何で伸び続けるんでしょうね。しかも人によって生えたり生えなかったり無駄にコシがあったり縮れてみたり、気まぐれなのも輪をかけてタチが悪い。
しかし人体の構造にどうこう言っても抗えるものではないから、人間は仕方なしに自分で髪を刈ったり散髪を職業としてシステム化してみたり、そこで色を変えたり結ったり曲げたりして、涙ぐましい遊戯へと発展させていったのである。
本当は丸刈りにしてしまってもいいのだが、人様に媚びへつらう仕事をしている以上やむなく美容院に行く。最近は調子に乗ってパーマなんかかけちゃったりするものだから、何時間も時間を取ってもらってしまう。
別にコミュ障が過ぎて店の人と話すのが嫌だから美容院に行きたくないんですみたいな死ぬほど擦られたあるあるは今更言いたくないのだが、それでも仕事柄俺にあの手この手で話を振ってくれる美容師の皆様には申し訳ないなと思う。何故かどうしたってこの世の終わりみたいな話題を持ち込んでしまう。

「やっぱ文明が行き過ぎたんですよねえ」
「あーそうですよね」
「早いとこ人間は滅びるしかないんですよねえ」
「あーそうですよね、襟足こんな感じです」
「あっ、これで大丈夫です」

こいつ、やたらネガティブなくせに髪を切るくらいのモチベーションはあるんだなとか思われていたら屈辱である。